原田マハ『リボルバー』
アートの舞台裏をフィクションで描く物語は、もはやマハさんの独壇場
本作は『たゆたえども沈まず』で題材にしたゴッホが再び登場
あらすじ
パリのオークション会社で働く日本人、高遠冴のもとに、古びたリボルバーが持ち込まれた
所有者は、それがゴッホを撃ち抜いた拳銃だと主張する
冴と同僚は真贋を確かめるために、拳銃の調査を始めるが、やがて、ゴッホとゴーギャンの二人の天才画家と、二人に関係する人物たちの姿が浮かび上がってくる...。
感想
ミステリー仕立てのこの物語の最大の謎は「ゴッホの死は本当に自殺だったのか?」という点だが、もう一つ、どのような経緯でリボルバーが今の所有者に渡ってきたか、という点もある
そこには、タヒチ時代のゴーギャンと地元娘との美しく哀しい愛の物語と、それを語り継ぐ母娘の切ない想いが重なっていた
告白を聞き終えたあとで、冴が語る、
フィンセントもポールも幸せな生涯だったと思いたい、という願いは、そのままマハさんの気持ちなのでしょう
理由なんかなくたって、強くそう願う、という気持ちが迸る文章に、胸が熱くなって思わず涙しました
ミステリーで始まった物語も最後はアートと愛の物語
そこがマハさんらしいですね...。
オフライントーク
さてと、ここからは、オフライン・トーク
この小説は「アートミステリー小説」と呼ばれています。
個人的には、アートとミステリーは実はとても相性がいいと思っています。
ダン・ブラウンの『ダ・ヴィンチ・コード』が有名ですが、マハさんの『楽園のカンヴァス』や『暗幕のゲルニカ』もその仲間に入ります。
アートミステリーでおすすめの小説については、又別の機会に書きますね。
作中に、同僚が冴のことを、我が社のウォーショースキー、と呼ぶシーンが何度かあります。
これは、サラ・パレツキーという人が書いた、シカゴの女探偵を主人公にしたハードボイルド・シリーズの主人公の名前です。
V・I・ウォーショースキー、通称ヴィクは、美人の女探偵で空手の達人、毎回危険を顧みない体当たりの調査で、傷つき痛めつけられますが、不屈の闘志と持ち前の鋭さで悪い男たちをやっつける、こちらもとても魅力的なシリーズです。
ですが、ちょっと喩えるには違和感が...
ヴィクを知らない人には伝わらないし、知ってる人にはキャラクターのミスマッチ感があってピンと来ないし...
同僚の下手なたとえ、と思うしかないのかなあ....